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2014年1月11日 (土)

2013年ワークソング(労働歌)ベストテン・国内編

こんにちは。坂倉昇平(@magazine_pose)です。

昨年末の紅白歌合戦を視聴しての連続ツイートに反響をいただきました。ありがとうございます。
労働から考える【裏】紅白歌合戦
雑誌『POSSE』編集長による2013年紅白解説

さて、音楽系のライターさんやブロガーさんたちが次々と2013年邦楽ランキングを発表しているのを横目に、私も便乗しつつもオリジナルな企画をしてみようと思い立ちました。まあ、オリジナルというか、隙間産業すぎて誰もやらないだけかもしれませんけど…。

で、何をやるかというと、これです。
題して「2013年ワークソング(労働歌)ベストテン・国内編」!

読んで字のごとく、2013年に発売された邦楽のなかから、ベストテンなワークソング(労働歌)を、私の微妙な感性と牽強付会の理屈によって、僭越ながら選ばせていただこうという企画です。ワークソングといっても、労働や貧困を歌った歌ぐらいの意味のつもりです。日本の労働の現実を反映し、できればそれに対する批判やオルタナティブも志向するような歌だったらいいな、という思いを込めてこの言葉を使わせていただきます。

それでは早速いきます。


【選外】Proletariat(PRIMAL)

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90年代、パンク色の強かった時代のTHE MAD CAPSULE MARKET'Sにこんなタイトルの歌がありましたが、当時よりも切迫感があります。ヒップホップグループ・MSCのPRIMALのソロアルバムより。「働き蜂〜」のパンチラインがかっこいいです。ただ、「ニート」をディスりがちなところなど、ワークソングとして紹介するには引っかかるところがあったので選外とさせていただきました。ヒップホップだから言葉の荒さは仕方ないとは思うのですが…。とはいえ、紹介しておきたかったのでここで。


【10位】おやすみ、また明日(花澤香菜)

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http://www.kasi-time.com/item-65471.html

人気声優・花澤香菜のファーストアルバムより。
透明感のある声も耳に心地いいし、カジヒデキをはじめ渋谷系、ポスト渋谷系と括られそうな面々のプロデュース陣を揃えています。
こちらは、本人が初作詞したという一曲。途中の台詞はちょっと気恥ずかしいですが…。
素朴な歌詞ですが、だからこそ染みるものがあります。


【9位】ワークソング(星野源)

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http://www.uta-net.com/song/145716/

このタイトルで入れないわけにはいきません!
俳優としても活躍する星野源の、タイトルずばりの「ワークソング」。
涙を流し、血を吐きながら、深夜まで(定時と零時じゃ全然違う気もしますが)働く人々の姿が歌われます。
ただ黙々と働くことに追われてしまい、いまは口にできない胸の「想い」や、待つことしかできない「救い」。
それを人々が自身の手で叶えて、実現できる日は来るのでしょうか。

彼自身が、くも膜下出血で活動休止をしていたことも重なります。完全復帰を願いつつ。


【8位】魔法が使えないなら(大森靖子)

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2013年に話題をさらったシンガーソングライター、大森靖子。
脱法ハーブ/握手会/風営法/放射能の羅列から始まる「音楽を捨てよ、そして音楽へ」も強烈ですが、仕事のない日の怠惰な描写に始まり、ルサンチマン的な怨念と孤独感が炸裂するこちらの一曲を。
90年代以降の、サブカル好きな方が好きそうな、自意識を吐き出す歌って、コミュニケーション的なレベルの疎外感が中心となって、貧困や労働を歌うことを回避する傾向があるように思いますが、日常を這いずり回るような彼女の歌は、その罠には陥っていません。そういう意味でも10年代的な存在なのかもしれませんね。


【7位】Dance My Generation(ゴールデンボンバー)

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バブルを知らない80年代生まれがバブルを夢想する、楽しくも哀しい一曲。
ディスコでナンパに明け暮れ、さんざんバブル幻想を謳歌した挙げ句に待ち構えているのは、一人で電車で帰宅し、自転車を盗まれるという惨めなオチ。さらにはアルバイトを切望するという、カネも仕事もないリアルな現実がとどめを刺します。

こんな歌ですが、まさかの風刺になっています。バブルを羨望しても、非正規でもブラック企業でもないまともな雇用が創出されなければ、意味がない…。90年代J-POPのパロディを演じてきた彼らが、バブルとディスコというテーマを選び、そこに「女々しくて」同様に格好付けて自虐ネタで落とすギャグを適用した結果、結果的にそんなメッセージになってしまっただけだと思いますが…。

なお、MVの最後には現実を大きく上回る「失業率95%」という恐怖の文字が…。
これが予言とならないことを願います。


【6位】休もう、ONCE MORE(NONA REEVES)

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http://petitlyrics.com/kashi/938491/

これぞシティポップスというノーナリーブスのアルバムから、耳に心地よい一曲。
シティポップスって、バブリーで都会的な恋愛を歌うイメージが強く、仕事とか生活感のある歌詞なんて口にした瞬間、興ざめしそうです。
でも、それってじつは、裏を返せば「休暇」との相性が抜群だということだと思うんですよね。
「休む」ことの快楽を追求したシティポップスが、一周回って立派なワークソングになることもあるわけですね。
昨年末に亡くなられた大瀧詠一さんの名盤のタイトルも『A LONG VACATION』でした。


【5位】三文銭(MOROHA)

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ラップとアコースティックギターの異色コンビ、MOROHAのセカンドアルバムより。
漫画『ザ・ワールド・イズ・マイン』『キーチ!!』の新井英樹が手がけたイラストのジャケットが印象的ですが、この歌もただならぬ迫力があります。

THE BLUE HERBの「未来は俺等の手の中」を彷彿させる、ラッパーの憂鬱なバイト生活の独白。それをハードでタフな物語に鍛え上げたTHE BLUE HERBと違い、MOROHAのラップは情けなく、痛々しく、泥臭い。まさに新井英樹の漫画に出てきそう。

一方、ラップで人を喜ばすことや、成功に対する思いは、ストレートすぎて聴いてるこちらが戸惑ってしまうほど。
でもそこで惹かれるのは、ラップ担当のアフロの一貫したスタンス。
卓越した「イカれた奴」じゃない、いってみれば平凡な人間の視線です。
早世したカリスマのような「ぶっとんでる奴」じゃなく、職場の上司を殴れずに バイトのバックレもできない、そんな臆病な存在。
新しい一歩を踏み出すにも迷いに迷ってばかり。
でも、そんな「真っ当」な人間が何かに踏み出す勇気が、ロックンロールであり、ヒップホップであり、パンクロックだ…。
そんな絶叫には、胸を熱くさせられました。

なお、同じアルバムの「ハダ色の日々」では専業主婦との家庭を夢見て、そのために残業もするという、ささやかで「普通」のささやかな希望がラップされます。
しかし…野暮を承知でいいます。その夢は二つの意味で「真っ当」ではないと思うんですよね。
まず、男だけが片働きで働いて専業主婦を養えるモデルなんて、もはや一般的に成立しないという意味で。
そしてもう一つ。エリートでもないのに、長時間の残業をしなくてはいけない働き方が、本当に「真っ当」な理想であるべきなのかという意味で。

別に、職場の上司を殴らなくていい。だけど、仕事以外の生き方を堂々と優先し、家族と過ごせる生き方こそ、「真っ当」であるべきだと私は思うんです。
ただ、それもまた理想にすぎなくて、いまの日本ではリアルではないんだろうな。


【4位】キリギリス人(ノースリーブス)

LINK

http://www.kasi-time.com/item-65140.html

「Dance My Generation」に続き、ゴールデンボンバー鬼龍院翔さん二曲目のエントリーです。
作詞は秋元康、歌はAKB48のオリメン3人組ユニット、ノースリーブスです。
ノーナリーブスとは関係ないです。

この歌の良さは、なんといっても歌詞が、会社人間的な生き方を小馬鹿にし、自らにプライドをもつノンエリート讃歌であることに尽きます。

なんで秋元康はこんな歌詞を書いたのか。
AKB48グループお得意の、メンバーの物語を歌詞化する戦略はこの場合はとっていません。
ノースリーブスのメンバーは人気的にはエリートといえるし(髙橋みなみ、小嶋陽菜、峯岸みなみ)、そもそも彼女たちのシングル曲は、彼女たち自身の物語に依存する手法をとったことがないはず。
このユニットはずっと、コアな48グループファン「以外」の消費者を狙ってきたんだと思うんですよね。
「キリギリス人」のカップリングに至っては、小室哲哉、石野卓球、川本真琴とビッグネームのアーティストを招聘。しかも、秋元康が48グループのほぼ全ての作詞を手がける(その数800曲以上)という慣習を本格的に破り、彼らに作曲のみならず、作詞まで委託しています。

この歌については、秋元康が貧困や労働問題が広がってることに目をつけて、書いてみたのではないでしょうか。
実は秋元康は、こういう歌詞を48グループにあてて過去にもいくつか書いているんですよね。

しかし、そんなワークソングとしての評価(をしていた人がどれくらいいるか知りませんが)を裏切るかのように、このシングルの発売の二週間後、ノースリーブスのメンバーでもある峯岸みなみの丸刈り事件が起きます。
もはやファンしか覚えてなくて、世間的にはみんな忘れてますよね。
あれだけ「AKBはブラック企業だ」とか糾弾されていたのに…。いいのかそれで。
と思ったけど、私もそういう発言をしてました。
朝日新聞デジタル (探)丸刈り謝罪、誰のため? AKBファン「僕らが追い込んだのか」


【3位】Money Money Money(Andymori)

LINK

若手ロックバンド、Andymoriの5枚目のアルバムより。

率直すぎるほどのタイトル。鎧、名刺、犬のように鎖につながれている…という飾りのない表現。
だけど、カネと労働に縛られる人間になることへの嫌悪感と閉塞感が、さらっと吐き出されています。2分ちょっとという短さも、説教臭くなくてちょうどいい。
80年代の反会社人間的な価値観のように無責任な「自由」や「逃走」を謳歌するのではなく、逃げ込んだ先が皮肉の袋小路にしかならないのは、現代的といえるかもしれません。
このあたりのさじ加減の難しさは、日本の若手ロックバンドが労働を歌いづらい理由にもなっている気がしますね…。

活動再開に期待しています。


【2位】恋するフォーチュンクッキー(AKB48)

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2位はAKB48のシングル曲。「ヘビーローテーション」に並ぶAKB48の代表作となった「恋するフォーチュンクッキー」。
この歌を流行らせたのは、70年代のブラックミュージックテイストな楽曲のよさに加え、素人にも覚えやすいゆるい振り付け、Youtubeへのダンス動画投稿による、参加型ダンスをうながす戦略でしょう。

皆さんお気づきですか。これはワークソングです!しかも、二つの意味で。

注目すべき一点目は、ミュージックビデオです。この歌は参加型ダンスあってこそ。そうなると、MVは視聴者を踊りにいざなうための視覚的な装置として、重要な役割が託されています。普段以上に歌と切り離せない意味のあるこのMVには、この歌と労働を結びつけるための仕掛けが盛り込まれています。
まず冒頭で、黒人DJがいう台詞の字幕をよく見て下さい。「カネがない、仕事がキビシイ」…。
そして、園児や学生をはじめ、タクシードライバーからトラック運転手、ホワイトカラーまで、あらゆる職種の人たちが次々踊りまくります。
そう、これは、この歌が貧困と過労の時代のワークソング音頭であるという表明にほかなりませんよ!
片思いの恋愛の歌でありながら、「未来」や「世界」を歌う歌詞も、社会の困難を自覚したうえでの希望を歌っているように聞こえてきます。

ポイントの二つ目は、なんといってもAKB48と、指原莉乃の物語です。
48グループは、メンバーたちをとりまく物語を歌詞にすることによって、その付属物として歌を消費させるという戦略を頻繁に採用してきました。それを知らないと全く意味のわからない歌が、48グループにはたくさんあります。
じゃあこの歌は何を前提としているのかといえば、言わずもがな。「恋するフォーチュンクッキー」を歌ってるのは、2013年のAKB48シングル選抜総選挙の上位16人による選抜。この歌のもう一つのテーマは、まさにその総選挙です。自力でシングル選抜まで上りつめた須田亜香里などSKE48の躍進が驚異的だった総選挙でしたが、前年の恋愛スキャンダルから這い上がり、HKT48の指原莉乃さんがセンターとなったことで何よりも記憶されているでしょう。

その彼女がこの歌では、「かわいいコ」が人気投票1位になることへの不満を歌っています。
それは「かわいくないコ」(失礼)でも一位になれるという意味なのでしょうか?
恋愛スキャンダルのペナルティまで受けて、それをネタにしてはばからない48Gのジョーカー的な存在の指原莉乃。従来のアイドル像からすれば「かわいいコ」ではない彼女が一位になったことで、総選挙の競争の多様性が広がったと考えるべきか。
その解釈もありえるでしょう。これは2013年の選抜総選挙をどう解釈するかという問題にも関わってきます。

私はこの歌が、「AKB48はブラック企業だ」という批判に対しての、秋元康の回答でもあると考えています。彼はこの歌で、メンバーを過度に追い込んでしまう選抜総選挙=人気競争を相対化しているからです。
2013年のAKB48は、恒例のリクエストアワーでも映画第三弾でもなく、なんといっても峯岸みなみの丸刈り事件で始まりました。
秋元康は、この事件を直接の契機としたのか、人気投票におけるメンバーの負担を考慮して、選抜総選挙に2013年から立候補制を導入します。人気競争に参加しない選択肢を与えたわけです。さらに彼は、選抜総選挙の意味を相対化させる「訓示」をメンバーに伝えていたそうです。例年は競争を鼓舞していた秋元康が、この年は違っていた。総選挙に参加してどんな順位であれ、自分なりの活躍の場をつくればいいのだという趣旨の発言をしていたとか。
立候補制度は、AKB48の代名詞ともいえるイベントから逃げるのかという「踏み絵」としても作用し、総選挙の立候補を選ばないことで自分の気持ちに区切りをつけ、そのまま卒業していったメンバーもいます。
そのなかには、同じチーム16人のなかでたった一人だけ名前を呼ばれないままという、つらすぎる経験をしたメンバーもいました。
しかし、「競争が醍醐味の48グループにいるのに、競争しないなんてありえない」というファンの罵声が予想されるにもかかわらず、立候補を辞退したり、来年度からの辞退を明言しながら、現在も積極的に活動しているメンバーたちもいます。

そんな事情を背景に、センターの指原莉乃が「かわいいコ」が一位になる人気投票の不満を歌っているわけです。これって、誰もがエリートを目指す競争を強制されてしまうAKB48において、ノンエリートとして活躍しながら自分の夢を目指す、別の競争のあり方を目指す、そんなモデルを示す物語でもあるってことですよ。

なお、AKB48は日本の労働の縮図であるというのが私の持論です。とすれば、2013年のAKB48は、ブラック企業と批判されたことを受けて、その回答として、日本の労働のあり方に対する修正の実験を提示してみせた、といったらいいすぎでしょうか。
もちろん一方では、様々な矛盾をはらんだ巧妙な妥協策でもあるわけで、手放しの評価なんてできません。ただ、高所から特定の企業を糾弾する「だけ」では、新しい労働のモデルなんて生まれません。

というわけで、ブラック企業の時代に希望を歌う「音頭」であり、AKB48内の競争のありかたを修正する物語であるという2つの意味で、「恋するフォーチュンクッキー」は2013年を象徴するワークソングです。


【1位】JOY!!(SMAP)

LINK

http://www.uta-net.com/song/146375/

1位は、2位と迷ったのですが、SMAPの記念すべき50枚目のシングル曲を選ばせていただきました。
ワークソング的にいえば、この歌は「競争」や「会社人間」に対するアンチテーゼです。

というと、こんなツッコミを受けるかもしれません。「世界に一つだけの花」かよ、と。
10年前にダブルミリオンヒットを記録し、小中学校の教科書にも掲載されているという「世界に一つだけの花」。
小泉構造改革と対テロ戦争のゼロ年代前半に、競争を否定した名曲…そう思われがちなのではないでしょうか。
たしかにそういう側面もあると思います。実際、改めて聴くと結構良い歌詞であることに気づかされます。
ただ、どこかきれいすぎる印象も受けます。なぜか。

ちょっと回り道をさせていただきます。こんな俗説があります。
戦後の日本は競争を否定してきた、それは戦後民主主義が「競争はよくない」という思想を日本社会に蔓延させきたからだ、と。
しかし、繰り返しますが、日本の労働は競争を大前提としていました。
総合職として採用されれば、誰もが「平等」な機会を与えられて出世競争に放り込まれる。幹部になんて、ほんとは一握りしかなれないのに。職務によって仕事が規定されている欧米社会では、会社内部で配転を繰り返しながら、サラリーマンが昇進していくなんてモデルはほとんどないのですが、誰もがエリートを夢見せられて競争させられる。それが日本型雇用のモデルです。
「世界に一つだけの花」には、生活や労働との接点はありません。良くも悪くも、花屋で見かけた「いい話」です。
もちろん、だからこそ、寓話的な普遍性もあるとは思います。
一方で、「競争はよくない」という言葉ばかりを繰り返したところで、綺麗事にすぎないという不満を感じてしまうのは仕方ないのかもしれません。
歌に責任を負わせるつもりはありませんが、この曲の大ヒットをよそに、ゼロ年代の日本は、非正規雇用と就活競争とブラック企業の時代に突入していきます。

むしろ、「JOY!!」で私が思い出したのは、90年代のSMAPのヒット曲の数々でした。
「がんばりましょう」「KANSHAして」「たぶんオーライ」…。
これらに共通するのは、ブラックコンテンポラリー的な曲調はもちろんのこと、歌詞の登場人物が、仕事を嫌々と、「不真面目」にこなすサラリーマンやOLだということ。
そこには、比喩ばかりでどこか説教臭い「世界に一つだけの花」と異なり、競争からの距離感を地に足についたかたちで体現する、「労働」という媒介がありました。
90年代のSMAPは、会社人間的な生き方から距離をおいて、仕事をやりすごしながら、競争にのらない「不真面目」な働き方を、具体的なノンエリートのモデルとして実践していたわけです。
それはまさに、安定した仕事のなかで、会社人間に嫌気のさした層に向けた歌詞だったからだと思います。

ただ、それも長くは続きませんでした。これらのSMAPの不真面目な労働ソングが歌われた当時はまだ、大規模なリストラも非正規雇用化もまだ本格化しておらず、日本型雇用はそれほど崩れてはいませんでした。
90年代末になるにつれて、日本型雇用が変容し不安定化するなかで、SMAPからこうしたシングル曲は見当たらなくなっていきます。
結局、こうした一連の楽曲は、生活にまだ余裕がある時代の「競争の否定」だった、と言えるかもしれません。

それから15年以上が経ち、日本型雇用は大きくかたちを変え、非正規雇用とブラック企業の時代が到来しました。
そこに颯爽と登場したのが、この「JOY!!」です。
「生真面目さん」たちが休日も仕事をひきずり、せめぎあって疲労している。そんな社会で、無駄なことをしようと誘いかけています。聴き手にとってかつてあっただろう、仕事に追われていなかった「あの頃」に、SMAPの歌の90年代前半までの「あの頃」が重なり、かつての「不真面目さ」を、いまの働き方のなかで取り戻そうというメッセージを堂々と歌っています。

なぜ、2013年にこんな歌が復活したのでしょうか。
近年のSMAPは、前山田健一、サカナクションの山口一郎、クリープハイプの尾崎世界観など、若手アーティストの才能を貪欲に起用しています。この歌では赤い公園のリーダー・21歳の津野米咲が作詞・作曲しています。SMAPファンの彼女は、まさに「KANSHAして」など90年代のSMAPの曲を意識して、この歌をつくったとのこと。そんなわけで、彼女が90年代の頃のSMAPを、10年代に蘇生させたわけです。しかも、少しアップデートさせたかたちで。
会社人間的な働き方に固執せず、仕事以外の「無駄」を楽しみながら生きていく。
それはいまや、90年代の安定した時代の愚痴としてではなく、10年代の不安定で過酷な時代に、前向きなノンエリートのスタイルを切り開く歌に聞こえます。
それを「国民的アイドル」のSMAPが歌ってヒットしていることに、グッときました。「恋するフォーチュンクッキー」同様、一般人がダンスするというコンセプトのあるMVも幸福感があっていいです。


若者を過労やパワハラで使い捨てるブラック企業が、流行語にまでなった2013年。
ブラック企業を糾弾し、怒りをぶつけるワークソングはちょっと見当たりませんでしたが、さまざまなジャンルで、さまざまな戦略や主張のもとに、労働に触れる曲は確かにありました。
ちゃんと休みながら、仕事以外に喜びを見いだせる、そんな「普通」の生き方・働き方への模索が、ヒップホップ、シンガーソングライター、声優、ポップス、ロックバンド、アイドル、エアバンドと、いろいろなジャンルを超えて聴けたのではないかと思います。

誰にとっても身近な労働問題において、多くの人の心にも響くような普遍性をもちながら、働きかたや生活を支える社会のありかたに対して、聴く人の意識を少しずつ変えていくような、そんな歌の登場に、2014年も期待していきたいと思います。

以上、野暮ったい説明でお送りしてきました。2013年のワークソングベストテン。
いかがだったでしょうか。
ちょっと強引だったかな。ていうか、しつこかったな。
聴けていない歌もたくさんあるはず。もっとがんばります…。

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