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2010年4月

2010年4月 9日 (金)

『特上カバチ!!』か『ダンダリン101』か『サラリーマン金太郎2』か?

今年1月~3月に放送された『特上カバチ!!』が問題になってます。テレビドラマやマンガと労働組合について考えるいい機会だと思いますので、他の作品を紹介しながら、これからの労働運動の課題について書いて見ようと思います。

 TBSが放映したドラマ「特上カバチ!!」で「行政書士が、法律で認められていない示談交渉を行う場面があった」などとして、大阪弁護士会が TBSに抗議し、DVD販売や再放送の自粛も求めていたことがわかった。

 行政書士法は、書面作成に必要な範囲で法律相談を認めているが、弁護士会は▽業務内容を明らかに超えた法律相談を頻繁に行っている▽法律 で認められていない示談交渉を行っている――などと指摘している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100409-00000857-yom-ent

確かに、行政書士が非正規切りの撤回を求めて経営者と争うエピソードには確かにかなり無理がありました。ただ、なかなかいいセリフを言っていたのでメモってしまいました。

堀北真希が「会社を守るために労働者を守れないなら、会社なんて経営しないでください。無能な経営者は社会の害悪です。」と叫び、嵐の櫻井翔が「何が自己責任だ! 規制緩和だ能力主義とかいって労働基準法が骨抜きにされて、景気が悪くなったら簡単に切る、そんな世の中おかしいでしょう!」と怒っています。なかなかラディカルです。

一方、今週のモーニングで掲載していた漫画、例の労働基準監督官が主人公の「ダンダリン101」では、労基法違反ではないためセクハラの相談に応じることができず、別件で会社を臨検するという話が描かれていました。

この二つの作品は日本における労使紛争のあり方をめぐって、結果的に非常に対照的な指摘をしていると思います。

職場のトラブルには、行政書士がいくら怒っても、労基署による国家規制でもその管轄外で解決できないものがあるわけです。行政書士はそもそも今回指摘されたように、弁護士と同じような活動ができるわけではありません。他方、労働基準監督署は、労働基準法の違反でしかとりしまることができません(賃金未払いとか有給を取らせないとか)。

そもそも、法的な管轄以前にそんな正義感のある行政書士や労働基準監督官が現実にどれほどいるのかというとこれも微妙です。個人が高い金を払って自力で労働問題に詳しく、かつ労働者側についてくれるような専門家を探すことは大変難しいことです。
一方で国家がどの職場でも最低限守らせなければいけない条件を法律で規制することは重要ですが、現在の日本ではそれがあまり機能していません(『ダンダリン101』の監督官たちは非常に熱心だと思いますけれども)。それに、もともと国家の規制は、職場の条件によって左右されるような細かい問題を判断するのには向いていないと言われます。

それぞれ重要なのですが、この二つの限界を克服すべく、労働者が集団的に経営者と交渉して紛争を処理するという、労働組合による解決というプロセスがいま特に求められているのではないでしょうか。弁護士を頼るにしても、労働組合をつうじたほうがいい弁護士を見つけやすいと言えます。また弁護士費用も個人で負担することは非常に難しいですし、金銭面だけでなく心理的な支えにもなります。労働者個人と経営者は決して対等な関係ではありません。こうした力の不均衡を指して「フィクションとしての市民社会」と言われますが、この不均衡を是正して会社と労働者が渡り合うには、労働組合の力が重要です。

それに、労働組合の交渉によって、既存の法律や判例の水準にとどまらない新しいルールをつくることができます。組合と企業で労働協約を締結して、同じ企業や産業全体を適用範囲にすることもできますし、労働組合と弁護士と連携して裁判を起こすことで、新しい判例をつくることもできます。そしてさらには、それが新しい法律の制定につながることもあります。
こうした新しいルールをちゃんとつくれば、単に自分個人の問題だけでなく、同じ職場や、同じような境遇にある人たちの労働環境を変えていくことになるわけです。

労働組合ということで考えると、ここ数カ月で一番まともだった作品は『サラリーマン金太郎2』で永井大が労働組合委員長になって解雇と闘ったというエピソードかもしれません。リストラの対象になった会社員たちが起業して協同組合的(?)な経営まで始めます。しかし、これも正社員のみの企業別組合でしたし、最終的に元の企業と合併してしまいますので微妙です。

職場のことは労働者と経営者が話し合って決める。その前提として、労働者が組合によって連携していることは大変重要です。こうしたあり方を産業民主 主義といいますが、非正規雇用で働く人も含めたかたちでの産業民主主義をつくっていかなくてはいけません。

産業民主主義のための制度的な保障もそうですし、正社員や企業別にとらわれない新しいかたちでの労働者の集団性のあり方をもっと実現していく必要が あります。
文化的にもそうした作品が描かれていくことを望みたいと思います。


なお、『サラリーマン金太郎』のエピソードについては基本的に原作の漫画と99年の高橋克典版と同じ展開です。これと『特上カバチ!!』と同じ原作を00年にドラマ化した『カバチタレ』も含めて、ドラマと労働紛争について「サラリーマン金太郎のユニオニズム」ってタイトルで原稿を書いています。『POSSE』3号でテレビドラマと労働問題についてまとめている特集があり、そこに掲載していますので、興味のある方はぜひご覧ください。


http://npoposse.jp/magazine/no3.html

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